結論
出来るだけ学問的な背景、ないしは広範な調査的論拠のあるものをおき、かつパフォーマンスに直結するとされるものをリストアップすれば以下の4つになります。
・(a)傾聴・アサーション(最も基底的)
・(b)内発的モチベーション・フロー状態
・(c)デザイン思考・学習する組織・経験学習
・(d)習慣化・ゲーミフィケーション
・(e)マインドフルネス
は(a)は心理学寄りの分野、カウンセリングの技術から出た概念(b)が経営学の概念、(c)や(d)はどちらかといえば教育学に近い概念
ということで、3つのディシプリンがそれぞれ仕事に対してじっくり考えた結果といえるでしょう。これらの考えが入り混じり、具体的なシーンに適用されることで、新しい概念を生んでいきます。
(a)はそもそも人間と人間の関係一般に適応されるべきものであり、人間の好意一般にも拡張しえます。ですから、「職場の人間関係本」「営業相手と信頼関係を結ぶには」は当然として、ビジネスとは無関係な「カップルが幸せに過ごすには」「親と子供の信頼関係を」「ナンパで成功するには?」といった本でも出てくる概念ですから、圧倒的な応用力を持ちます。「傾聴」の有効性について、深く納得していることで、かなりの分野の本が読みやすくなるはずです。
その応用性の広さを表すために、「傾聴が人間関係の基底である」ということは、全く別のディシプリンである哲学でも主張されていることを示しましょう。
カントは「汝の人格やほかのあらゆる人の人格のうちにある人間性を、いつも同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ」といっています。
(b)は経営学なのである意味仕事のライフハックの本流から出てきた概念と言えるでしょう。
Deci(1975)によると、内発的に動機づけられている活動とは「その活動そのもの以外に何も明らかな報酬がないもの」です。つまり、内発的な意欲を持つ人は"活動そのものから得られる楽しみのためにその活動に取り組んでいる"、"おもしろいから学んでいる"と言うことができます。
(c)は「学習」という言葉が含まれていることからわかるように、「学習」についてのほぼすべての概念が流れ込んでいきます。「学習」の横には「勉強」があり、そして「練習」があり「習慣化」というジャンルがあります。ここで(c)と(d)の差は、習慣化は何をすべきかわかっているという前提、学習についてはある意味何をすべきかわからないなかで模索していくというイメージで使っています。勉強や練習、訓練といった言葉がその2つの間にあるイメージです。
(a)と(b)
→(1)コーチング
アサーションと内発的モチベーションを仕事や目標達成の話で落とし込む技術はコーチングといえるでしょう。アサーションまでは主流の心理学ベースのカウンセリングの話なのですが、コーチングの話になるとNLPやアドラー心理学など非主流というか、科学的な実証とは別のロジックが出てくるという謎な点がありますが、背景にある概念としては、アサーションと内発的動機づけという、まあまあ安定した概念であるので、一定の信頼をおけると考えてよいでしょう。
→(2)心理的安全性
チーム論の根幹であり、アサーションとコーチングが、グループフローを生むという感じの論調です。
→(3)小さな進捗・1on1
心理的安全性を理想の状態として上で、そこを目指すための仕組みという感じで出てくることもありますが、根本的にはアサーションの中での「傾聴」をビジネス的に落とし込んだ仕組みと言えます。「傾聴」で内発的動機を引き出す、という含意がある場合もあり、そうすると(b)の要素も強まってきます。
→(4)スプリント・アジャイル
→(5)強みを発揮/VIA-SMART/ストレングス・ファインダー
これも「傾聴」系の延長といえるのですが、仕事特有の概念とは思います。パフォーマンス、幸福感の両方の点で、自らの強みを発揮しながら仕事ができていると思えることはプラスの影響があるのです。
(c)学習について
学習や練習については、
・1万時間の法則
・メンタルモデル
・deliberate practice
といった概念が主要なものと言えます。この先に「記憶力」系の概念もありますが、仕事の場では記憶力そのものが問われることはないので、外しておきます(学習に焦点を絞った本では学習と記憶力両方が扱われることも多いです)
マインドフルネス
個人のピークパフォーマンスを出すためにマインドフルネスのことが言われることがあるが、これは私も学習中なので、トピックとしてあげるにとどめたい
・ポジティブ心理学系
→(1)収入と幸福感が比例しない
→(2)チームの人間関係は重要