超凡人サラリーマンのためのビジネス書ベスト100

意識が低すぎず高すぎず、大きすぎず小さすぎず普通の会社に勤めるサラリーマンが、大量に読んだビジネス書の中から本当に普通の人でも役に立つ、みんなが知らない意外な百冊を紹介していきます。

社会人がマクロ経済学とミクロ経済学を独習するには

要約:高校卒業したてより社会人のほうが勉強が得意になっている部分もある。それを生かしてミクロマクロを勉強した経緯を残します。

自分が経済学部時代に経済学の基礎授業で躓いたことの思い出しつつ、学習の記録をしていきます。

目次

 

参考書選定

学部修了レベルを目指すということで「院試 ミクロ経済学 テキスト」などで検索しています。ただ、公務員試験であれ、院試であれ、そこまで大枠は変わらないみたいですね。

大人なので、初心者向けっぽい本を恥ずかしがらずに買う作戦でいきます。そういう意味で公務員試験向けの本のほうがわかりやすい演習本があるかなと思ったのですが、案外「みっちり講義!」みたいな本が書店では大きく取り扱われていたので、いったん避けました。

あとは演習書を優先してやることにします。理論を追ってさっと覚えられる頭ではもとからないので、演習で馴染む必要があると判断したためです。

マクロ経済学の定番書

マクロ経済学の院試向けの最終目標はこちらのようです。動学マクロ(個人的に、学生時代に憧れてたが全然触れられなかったところです。いわゆるルーカス批判というやつです。)までフォローがある様子。

この本にたどり着く手前で、いくつかステップをふもうと思います。

 

これが初心者向けの定番書のようですね。

 

講義編がこちらと。

 

しかし書店でパット見つからなかったので

 

こちらを買ってきました。証明問題なんかはほぼなくて、ほとんどの関数が具体的なようです。これをまず触っていき、中谷を挟むか、いきなり二神にいけるか考えてみます。

問題数は60ほどです。

ミクロ経済学の定番書

演習書が存在する本としては以下の3冊、武隈、神取、奥野が定番のようです。

武隈慎一ミクロ経済学』(新経済学ライブラリ)新世社

武隈は難しい、簡単の評価が分かれますが、かつては標準書だったようです。私大の大学院の問題でほぼそのまま出たという感じの書き方もみました。ただし、今となっては少し簡単すぎるといった評価もあります。あと、ラグランジアンを使っていないのが特殊な感じはします。

私はこれをメインにすることにしました。理由は後述。

神取道宏『ミクロ経済学の力』日本評論社電子書籍あり

 

 

現在もっとも支持が厚そうな教科書です。経済的意味の説明が豊富で、一定の数学的補助もあります。また『技』の方には、現実的問題に経済学的思考をあてはめるとどうなるか?という問題演習もあり、社会人の学習でもイメージが湧きやすいだろうと思います。非常に重要な本なのでしっかり読むことにします。

電子書籍があるのありがたく、外や寝床で復習したりするのにも使えます。

奥野正寛『ミクロ経済学東京大学出版会

 

奥野についてはamazonのレビューなどで不足が指摘されている双対性アプローチについての以下の補足ページが存在するので自分用のメモも兼ねて貼っておきます。

sites.google.com

 

奥野が最もレベルが高いというか、抽象度が高いです。扱われる関数も武隈より数学的に手順が必要なものが多い気がします(合成関数の微分を使ったりとか)。問題についても、解き方が指定されていたりするので、おそらく証明を意識した上で抽象的に解いて、そのあとで数値をあてはめてという感じで解かれています。(武隈は逆で、具体的に数字が入ってるものから、より抽象度が高い問題へとステップを踏んでいく感じです)

奥野についてはよくゲーム理論の不足が指摘されているので、ゲーム理論の教科書も補足で読む必要があるかもしれません。

もう1冊見つけています。定番かどうかは不明なのと、既に絶版になってしまっているようですが

 

こちらが演習+言葉による説明を丁寧に含んでいます。武隈+神取を1冊で済ますイメージです。設定されている関数の複雑さは奥野よりは簡単で、武隈よりもやや簡単かもしれないぐらいですが、問題形式になっている分、手を動かす余地はあると思います。独習で1冊だけならこれもいいのかもしれません。

 

最終目標としては神取も色々実例と言語的な説明があって読み応えがあるので、奥野の演習が手詰まらないレベル・神取の読了を最終目標とします。(それで院試の準備として成立するようです)

教科書をどう進めていくかの作戦

私は最初に手を付ける問題集を武隈にしました。なぜかというと武隈の演習が関数が具体的で、解説も簡潔です。全部で70問ほどです。(問題とトピックについては奥野とさほど差はありません)

奥野については(初版を手元においているので注意してください)、解き方の指定があったりすることで、実質的に証明に近い問題が見られます。これがちょっと初心者にはハードルが高いと感じられました。

かつ、奥野初版は1トピックについて1問しかないです。ですから、その1問の貸越が納得いかない場合、まるっとそこが抜けてしまうことになります。

武隈は、ラグランジアンを使わずに「微分してゼロ」「これは補題を使ってイコール」のように、問題を最短で解くことに特化した説明で進みます。

武隈の中身は理解した上で問題を解いていくというよりは、とりあえず手を動かして概念をなじませるような使い方を想定しているのだと思います。とりあえず消費者理論の最後の問題まで見た感じ、最後のスルツキー分解をゴールに、最初は効用を定数にして、徐々に文字を増やしていくような形になっていたことからの印象です。

ですから、まず問題を見て、解き方を確認して、とりあえず解説通り解いてしまうことで、概念を頭に入れるという使い方が向いていると思います。授業などで概念が既に頭に入っている、一度解説を読めば頭に入るというタイプの人は、最初から神取を読んで、奥野で解き方を練習するのがよいでしょうが、言語的な説明だけでは要点が頭に入り切らない人は、武隈のざっとした説明+とりあえず簡単な関数で問題を解かせるというスタイルが向いているでしょう。記憶力のよい人と、記憶を節約したい人、物覚えの悪い人、それぞれに向いている本があると思います。

もう一つ、神取は読んでいて強烈な違和感がありました。非常に違和感があるのは「常識的前提をもとにきちんと考えたことと経済学的な理論の帰結は概ね同じである」というスタンスです。社会人ですと、素朴経済学というか、色んな考え方に触れているので、自分なりの持論を既に持ってしまっているので、普通こうなるよね?と言われても、そうはならないだろうとなってしまうところが多かったです。

逆に言えば、「経済学人」の帽子をかぶった場合こんな風に考えられる、という意味で、勉強のゴールがイメージしやすいという意味では依然として良い教科書だとは思います(が、語りかけ相手が、素朴理論も持っていない純粋な学生向けなので、全然そうは思わねーよという、腹立たしさはあります笑)

数学的なこと

マクロ経済学の演習本から先にやっているので、そちらで出てきた数学の話からして、都度追記していきます。

高校では数学は得意だったのに挫折

そもそも高校の授業では別に数学が苦手な方ではなかったので、なんかどんどん出てくる数字についていけなくて、ものすごくショックだったんですね。

いくつか重要なバイアスがあったと思います。

高校3年生(というか、私は浪人したので4年生です)の段階では、数学が「わからない」という感覚を忘れている

→これがひとつ大きかったんだなと思います。

証明や厳密さ(大学入試レベルですが)を意識して考えていたつもりだったので、意味がわからない記号を飲み込んで、とりあえず手を動かしてみる、ということが出来なくなっていたんですね。傲慢になっていたというか。

しかし、学習心理学が教える通り、とりあえず手を動かす、例題を解いてみることは何重にも意味があります。

まず概念自体を記憶する必要がありますが

・テスト効果

によって関連概念が刻まれるというのもありますし、演習を解くということ自体が

・目的をもった練習(deliberate practice)

に近いということもあります。

そもそも何がわからないかわからない状態というのも数年ぶりな訳ですから

メタ認知

も働いていません。

逆に言えば、社会人になって、教科書のないタスクをやるなかで、全然自分では知らないことがたくさんあること、(大げさに言えば謙虚になったということでしょうか)を学んだ今となっては、とりあえず手を動かすとか、何が分からないのか考えるとか、そういうタスクに慣れた今となっては、これをとりあえず覚えてしまわないと前に進めないな、といった勘は働くようになっています。(それでも、演習形式で覚えるって抵抗があるので油断せずやっていく必要がありますね)

合成関数の微分が分からない

→これは数IIICをやってればみんな出来るようなことです(そう教えてくれ!)。なので、合成関数の微分や連鎖律で検索すればすぐに演習できます。

 

微分偏微分が分からない(そもそも全微分がなんなのか? dαとδαの違いなど)

→証明は証明でよいのですが、使えるようにならないので、いろいろな関数で練習をするべきかなと。

ネットで「全微分」で検索すれば、ある程度具体例が出てくるので、手を動かせば馴染むと思います。

eman-physics.net

この人ことでもあれば、と思ったのが、上の記事です。多分今の理系大学生とかググってお世話になってるようなサイトなんじゃないでしょうか。

概念的な理解に役立ったのはこの本なので、図書館で1~2時間かけて読んで見るのも良いと思います。小島寛之先生は統計学、経済学そのものなども含め、初心者向けの数学の本や一般向けの新書をたくさん書いてらっしゃる実績ある方です。よき論文作成者(要は大学教授)とよき指導者は違うものですから、こういう本を頼るのも自然だと思います。

マクロ経済学

マクロ経済学の学習マップ

(1)財市場での消費関数と投資関数(ここまででIS曲線

(2)資産市場での、貨幣需要中央銀行の役割(乗数効果)(ここまででLM曲線)

(3)供給市場での、企業の生産関数と動労供給の関数(IS=LMから導かれるAD曲線にAS曲線が加わり、価格が変動するモデルになるのでインフレとデフレが加わる・(フィッシャー曲線))

この3つまでが一つの体系になっています。ここに

(4)為替市場が加わる(マンデルフレミングモデル)、

ここまでが概ねまるっとIS=LMモデルか、その部分的な関数の形状をもとに議論されます。あとは独立した単元として

(5)成長理論

が存在していますが、

(3)でちゃんと出てこなかった、供給市場での企業の生産関数を具体化したものですので(3)’とでも言うべき内容です。

やたら複雑に感じますが、この4つだけです。

かつ投資関数でいえば2種類ぐらいあって……などとここから枝分かれしていきますが、その分それぞれの単元の独立性が結構高いです。関数AがわからなくてもBがわかっていれば、Bが出題されれば解けてしまいます。ですから、ある意味非常に暗記向きな科目と言えます。(ただし文章題ではAとBを比較するような文が出たりするので現実的な何らかの試験対策では、主要な関数を暗記する必要があります)

いやー暗記では、という人にも結局3つの市場で6つの関数がわいわいするというイメージは必要だと思います。大学院レベルとされるミクロ的基礎づけのあるマクロ経済学においても、それぞれの市場を仮定して、関数の形をよりミクロ的な最大化の論理で作っていく、というだけの話にすぎませんので。

ただし、それぞれの場面で最低でもケインズの想定した関数と古典派の想定した関数が訊かれるので、面倒ではありますが、それだけでも12個の関数があります。(為替を加えて14個)ですから、これはもう単語カードとかにして覚えたもの勝ちだと思います。

ただし、ミクロ経済学と比較すると、マクロはこのように複数の考え方が対立しているのが最初から教科書レベルでも提示されます。ミクロ経済学のように「常識で考えればわかるよね~」といったスタンスはとらないので、暗記が必要だと最初から目処が立ちます。

IS曲線・LM曲線の移動の話

そもそも均衡時の曲線っていう概念がどうなんでしょうか、高校物理の延長だと分かりにくいとは思っています。つまり、ある状態のうち安定的なものだけ描き出していった曲線なわけです。

ここは先にミクロ経済学をやっておいたほうがいいところではありますね。カリキュラム的には最初は国民経済計算とかをやってるので、ミクロ経済学

IS曲線が財市場の均衡だというところまでは比較的わかりやすいのですが、

補足教材

さて、効率のよい学習には、複数の学習方略を試すことが重要です。

ここで案外講義というのがバカにならないなと思います。音声と言語の利用です。図はテキストブックにものっているのですが、人間が図を描きながら説明をしてそれをメモにとるという時間は結構色んな感覚器官を使いますし、言語を使ったり例を出してもらうことで既存の認知リソースに訴えかけやすいだろうと思います。(図は、教育心理学でいうところの先行オーガナイザーの役割にもなります)

上のところでは問題=数式=概念名を覚えるのが一番効率がよいだろうと判断したわけですが、それだけでは不足する部分がここです。

しかし、これは大人にはないものなんですね。そこで数式中心ではなく、具体的な文脈や言語によって説明する教材がほしいとおもいました。普通はマンキューやクルーグマン、あとは齋藤などが候補なのでしょうが、音声で読めるとなお頭を効率的に使えるかなと思いました(あとは電子移動中や運転中などにも聴けますので)。

電子書籍の読み上げを考えたわけです。

しかし、経済学のある程度真面目な本ってグラフ必須なので、レイアウト固定の画像ものばっかりなんですよね。

そんな中、非常に真面目にマクロ経済学の全体を紹介した本があったのでぜひ皆さんもkindleスマホの読み上げで聞いてほしいです。表やグラフを前提とした説明もありますが、先にある程度学習しておけば何を言っているかは検討がつくレベルです。

国民計算、生産関数の議論から始めて、消費関数、投資関数、貨幣市場……と広がっていく標準的な教科書通りの構成になっています。

政府支出の乗数はどの程度なのか?といった話も出てくるので、具体的なイメージが湧きやすくもなるでしょう。

ただし、もっと具体例が多いものというと、やはりマンキューや齋藤があがってくるとは思います。マンキューレベルのものでいいので、本物のマクロ経済を例にとりながら解説してくれる本の、フローレイアウトの本を見つけたい……。見つけたらまた記載します。

ミクロ経済学

ミクロ経済学の学習マップ

(1)消費者理論 

(A)無差別曲線→(B)効用最大化とMRS、ラグランジアン→(C)支出関数と補償需要関数・補償所得関数とシェファード=マッケンジー補題→(D)所得効果と代替効果(スルツキー分解)

まずこの流れを頭に入れてしまうしかないです。結構納得がいきづらい固有名詞も多いのでそこは暗記が必要だと思います(自然に関数の名前とパラメーターが頭に入ると幸せですが、私はあんまりすっと入らなかったので、武隈を解いてみて、なるほどなという感じでした)。数値例で手を動かすのと、グラフを何度もみて頭に入れてしまうのが良いだろうと思います。

マクロ経済学と違うのは、例えば、消費者理論内の手前で躓けば後ろの単元はわからなくなってしまうことです。CがわからなければDの理解は無理です。一息に覚えられる人はさすがだと思います。しかし、そこまで物覚えの良くない人は、A→AB→AB→ABCのように何周もしつつ、それぞれを息が長い記憶にする必要があります。

ただ手前が分からない(覚えていない)だけなので、悲観せずに自分が今どこまでが自信があるかをきっちり把握することが大事だと思います(メタ認知)。

そういう意味ではやっぱり問題を暗記して、どこまでは解ける、どこからは解けない、という形で状況把握をするのがよいのでしょう。

スルツキー分解は数学的な流れと、グラフ上での流れを両方暗記してしまうのがよさそうです。数学的には連鎖律とマッケンジー補題の組み合わせですね。

(2)生産者理論

(A)利潤最大化(B)長期短期の費用関数

ここは武隈では異常に手厚い(例題が14項目)ので5項目になっていますが、他の演習書を見て項目を絞りました

(A)費用関数、限界費用と平均費用(B)利潤最大化→要素需要関数、供給関数、利潤関数の導出(C)補償要素需要関数、最小費用関数、シェパードの補題(D)短期と長期の費用関数(E)ホテリングの等式

が、他の教科書では非常に手薄です。遠山ミクロでは3題(利潤最大化、長期短期、部分均衡分析)、奥野ミクロ初版でも5題で、重要とされる★つきはわずか3題です(消費者理論は★だけで7題)。奥野ミクロ演習は第二版で問題が倍になったらしいので武隈並になっているかもしれませんが、当初東大が3題できればいいと考えていたというのは勇気づけられます。(逆に、武隈の丁寧さが出ているところでも有ると思います。

(D)短期と長期の費用関数は単純に内生変数がどれかというだけの話なのでさほど難しくもないですが、(A)で出てくる(サンクコストを除いて)利潤零以下の部分では企業は生産をしないというのが消費者理論との主な違いです。このことを図であらわすAVCとMC云々の話には当初困惑させられました。武隈の演習ではない教科書では微分してこれ見とけというスタンス。このわかりやすさが好きです。

 

遠山にあった「効用関数は0でも序数なのでよいが、利潤関数は0なら生産しない」が重要で、逆に言えばこの場合分けが発生すること以外は、消費者理論と似たような構造になっているためでしょう。そういう意味でも、消費者理論の理解を前提とした単元になっているので、とりあえず消費者理論の5項目の流れを頭に入れる必要があるでしょう。

(3)交換経済

(A)エッジワース・ボックス(B)契約曲線(C)パレート均衡 オファー曲線、ワルラス均衡

 

これも武隈は相対的に厚いですが、そこまで差はないです。ただ、ワルラス均衡が何なんだという話なんかはそもそもマーシャル均衡がないと意味が分からないので、この点でも武隈が丁寧だなという印象です。

補足:双対性アプローチの資料

単語を見ていると出てくる双対性アプローチについて。要は何を固定と考えて問題を解くか?ですね。

kitaguni-economics.com

 

補足教材

 

マクロのところで紹介した本とおそらく対になる本です。「新しい経済学の教科書1」というタイトルからして、おそらく「2」としてマクロ経済編が予定されていたのが、あんまり売れなかったので、マクロ編はタイトルが変わったのでしょう。(それにしても「飯田のミクロ」というタイトルはすごすぎないかとは思います。有名なエコノミストといっても、ホリエモンほど知名度があるわけではないんだから・・・・・・)

マクロ以上に普通のミクロ経済学の教科書をなぞっていく構成ではありますが、序数の話なんかは、流し聞きでもためになるところがありました。

 

こちらはミクロとマクロ両方をまとめた扱うものですが、単語をなでる程度になってしまうので、経済学について知識が零という場合でなければ向いていない感じはしました。

 

同種の、とりあえずミクロマクロの単語がどんどん出てくるという意味ではこちらもありますね。