超凡人サラリーマンのためのビジネス書ベスト100

意識が低すぎず高すぎず、大きすぎず小さすぎず普通の会社に勤めるサラリーマンが、大量に読んだビジネス書の中から本当に普通の人でも役に立つ、みんなが知らない意外な百冊を紹介していきます。

「最高のチーム」を支えるたった2つの概念とそれをあなたの職場にインストールするための意外な本

結論:

チームワーク本の多くはうまくいっているチームとそうでないチームを区別する基準を出してくれますが、今あるチームがどうやってそうなっていくか、というと実はビジネス書とはまた別のジャンルの本が役に立ちます。

ビジネス書系でよいチームの条件としてしばしば出てくる概念としては

・(A)心理的安全性

・(B)分権(自主性重視)・シェアドリーダーシップ

・(C)目的と手段の問い直しを往復すること

・(D)実験志向/学習するチーム/経験学習

・(E)多様性・グループワークによる強さ

・(F)やる気・モチベーション・内発的動機

・(G)強みを発揮しているという感覚

の7つが主かなと。かつ、Cはチームとは実は関係なくて、チームとしてBとDを実装することで、Cが生まれてくるという感じでしょうか。またFもチームとは関係ないのですが、チームのパフォーマンスへの影響は大きいのでたいていでてきます。

なのでチームワークの実践でクリティカルなのは実質的には4つかなと思っています。これらはお互いに絡み合っているので、何冊か読むとこんがらがってきますが、一定の結論を共有していると見てよいでしょう。

 

チーム以外の議論との接続もあり、ビジネス書好きの人にとっては馴染み深い概念も多いでしょう。

たとえば学習するチームの延長上にはデザイン思考の議論も加わってきますし、教育社会学における能力志向よりも達成志向がよいといった議論、あとは、実験志向のほうが創造性を発揮出来るといった議論も加わってきます。

 

 

 

心理的安全性については、心理学のアサーションの考えがベースになっていますから、コミュニケーション系の自己啓発の本、あるいはコーチングの本などを読んでいる人にとって、すっと入ってくる話でしょう。

 

 

チームといってもメンバーの組み立て方、2~3冊で網羅出来そうで、案外1冊にしか出ていない話も多く、ぴたっと網羅的な本がないジャンルです。

 

ただし、実際に職場に実装していこうとすると、なかなか難しいという印象を持つことが多いのではないでしょうか。

心理的安全性がGoogleの研究から始まっているように、IT業界の方がデータが残っていたりして、どうも研究しやすいようで、思い切ってIT業界の本を参考にするとうまくいきやすいと思っています。ではどのようなキーワードの本を読むとよいか?

前者の心理的安全性については、「1on1」がキーワードです。

その他の分権とゴールの問い直し、学習するチームについては、中でも「リーン」と「アジャイル」がキーワードになります。

リーンやアジャイルはチームの回し方とは別の概念なのですが、IT業界がチームワークを基本としているために、具体的なチームの回し方について一日の長がある、という風に思って読んでみると良いと思います。

 

目次

 

 

チームワーク論すべての結論本は中原淳『チームワーキング』

 

読んですぐは正直そんなにピンとこなかったというか、あまりにもあっさり書かれていて、かつ根拠も学生の行動なので、うーんて感じなんですね。でも、いろんなチームワーク本を読むと結局すべてがここに帰ってくる事がわかります。

 

・(A)心理的安全性

・(B)分権(自主性重視)・シェアドリーダーシップ

・(C)目的と手段の問い直しを往復すること

・(D)実験志向/学習するチーム/経験学習

・(E)多様性・グループワークによる強さ

・(F)やる気・モチベーション・内発的動機

 

再掲した6つの要素ですが、この本では

Feedbacking,Task Working、Goal Holdingの3要素で

FB→TW→GH→パフォーマンス と影響していくことになっています。

このうちFBはいわゆるAですね。なので、アリストテレスプロジェクトの心理的安全性こそが根本であるという主張とも整合しています。

A→E と A→B あたりから始まり、Bが社会的手抜きをさせずにFにプラスに働き……と相互に連関しあうのですが、最終的にはDやCを通じてパフォーマンスが高くなるという議論です。

チームとして実装すべきは

心理的安全性

・定期的なゴール確認の場 

・ゴールと手段の不断の振り返り

このあたりが結論になるでしょうか。

 

この本に出てこない要素としては「強みを発揮しているという感覚をもって仕事をする」という要素です。これは

 

ここでも出てきますし

 

ここでも出てくるもので、パフォーマンス以外にも幸福感にも影響します(2冊目の本はむしろ幸福感にターゲットした本です)。

おそらく強み→モチベーション→エンゲージメント→パフォーマンス というような経路だと思います。

強みについては

心理的安全性とは?

 

 

いわゆる心理的安全性の本です。チーム論はデータが取りにくいのでこの系統がまず大きいです。Googleのプロジェクト・アリストテレス由来ですから、データありきの概念です。

心理的安全性(psychological safety)」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。
組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。

心理的安全性とは | 人材育成・研修・マネジメント用語集

 

心理的安全性というのはどのように働くのか?

 

多様性がプラスになるという観点がある(前著の失敗の科学はチームとは関係ないが面白い)というのでまるまる1冊で、一種心理的安全性がどう働くか、ということの実例のような本です。

 

 

心理的安全性」の実装としての1on1

 

 

1on1の前提として傾聴をまず理解したほうがよいでしょう

 

 

すべてのコミュニケーションの基本です。

ここにコーチングの概念が入ってきます。

 

 

 

仕事はチーム単位でする、という前提で、チームメイトから関心や強みを発揮しているという感覚がパフォーマンスに影響していると説くのは上。データはシスコとのこと。

社員ひとりひとりのエンゲージメントがキーになるということで、計画より自主性を重んじることを説いています。

 

 

 

こちらの本は明らかにコーチングの考え方で、実際の職場をどうしていくかという観点について書かれています。別で読みたいか、職場についてのこととして読みたいか次第で価値は変わってくるだろうと思います。「嫌子」などの行動科学的な言葉も入っていますので、コーチングと心理的安全性についてある程度知識があっても面白く読める本だとは思います。今リーダーだ!1on1ってだけじゃなくてそれなりに声かけ頻度のある職場なんだけど、具体的にどうしたらいいかわからない、という方にはベストの本だと思います。

 

分権

 

 

心理的安全性に加えて、手段と目的を常時検証すること、分権=全員がチーム視点をもつ(と情報公開) あたりの重要性を解きます。日本の学生をもとに実験してデータをもとにどの程度の強さなのかまで載っているので、9lies about workにならんで説得力がある本かなと(9lies …は実地の企業のデータですが)。目標に常に立ち返り全員で納得出来る目標設定をすること Goal Holdingについては、ダニエル・コイルも目標設定を3つの条件としてあげてますので、やっぱりどのタイプの本でも出る話だとは思います。

 

 

 

読み物としてはこちらかも

メンバーの組み立て方

これはいわゆるデータのバックグラウンドがある結論めいたことはないんですが、以下の本あたりが触れてるので興味があれば。

 

 

学習するチーム

 

 

 

学習するチームの実装例としての「経験学習」

 

 

経験学習はPDCAに似ていますが、経験に対して、抽象化して、次の例にいかす、というところに私は重点があると思っています。PDCAというのは同じ目標に対してうまくいった、いかなかった、というのの繰り返しなのですが、経験学習はよりややこしい、複雑で変化する目標に対しても、部分的に教訓を得て生かしていく、そういうイメージをもたせてくれる概念です。

 

 

学習するチームということでいえばそもそも「学習とは?」というところで出る話ともオーバーラップしてきます。

 

 

 

メンタルモデルという言葉が割とよく出ますが、個人の話でもよく出る話です。

技術論なので、コーチングとティーチングの分類で言えば、ティーチングの域といえるでしょう。

学習するチームの実装例としての「アジャイル開発」

 

 

 

 

ラストの本は非常に変な本ですが、アジャイルという言葉の歴史的文脈を最も高いレベルの抽象度で説明してくれます。なので、仕事がシステム開発から遠くてもなんとなく役立つ可能性があると思うんですよね。他3冊についてはシステム開発という仕事に関してどうしていくかという本なので、仕事のスタイルがシステム開発に近ければ役立ちますし、そうでなければ役に立ちません。